石あり、柱あり

ふりさけみれば、鐵材《てつざい》を網《あみ》に組みたる橋梁《けうりやう》の、虚空《こくう》に躍りて架《かゝ》るあり、石あり、柱あり、ゴルゴンの鬼面《きめん》これを飾る。郊外に聳ゆるは何《なん》の塔ぞ、屋根あり、破風《はふ》ありて、家屋《かをく》の上《うへ》に峙《そばだ》つは、下|摶《う》つ鳥の皷翼《はばたき》に似たり。即ちこれ觸手ある大都會、屹然《きつぜん》として、平野田園の盡くるところに立つ。

紅《あか》き光のきらめくは標柱《へうちゆう》の上《うへ》、大圓柱《だいゑんちゆう》の上《うへ》、晝なほ燃えて、巨大なる黄金《わうごん》の卵子《たまご》の如し。天日《てんじつ》こゝに見えず、光明の口にはあれど、煤煙の奧に閉さる。

揮發《きはつ》の油《あぶら》、瀝青《れきせい》の波は、石造《せきざう》の波止場、木製の假橋《かりばし》を洗ひ、ゆききの船の鋭き汽笛、霧《きり》の奧に恐怖《おそれ》を叫ぶ、緑色《りよくしよく》の船の燈《ひ》はその眼《まなこ》、大洋と虚空《こくう》とを眺むらむ。

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