このをとめ

[#2字下げ]このをとめ[#「このをとめ」は中見出し]

このをとめ、みまかりぬ、みまかりぬ、戀やみに。

ひとこれを葬りぬ、葬りぬ、あけがたに。

寂しくも唯ひとり、唯ひとり、きのままに、

棺のうち、唯ひとり、唯ひとり、のこしきて、

朝まだき、はなやかに、はなやかに、うちつれて、

歌ふやう「時くれば、時くれば、ゆくみちぞ、

このをとめ、みまかりぬ、みまかりぬ、戀やみに。」

かくてみな、けふもまた、けふもまた、野に出でぬ。

[#2字下げ]別離[#「別離」は中見出し]

せめてなごりのくちづけを濱へ出てみて送りませう。

いや、いや、濱風、むかひ風、くちづけなんぞは吹きはらふ。

せめてわかれのしるしにと、この手拭《ハンケチ》をふりませう。

いや、いや、濱風、むかひ風、手拭《ハンケチ》なんぞは飛んでしまふ。

せめて船出《ふなで》のその日には、涙ながして、おくりませう。

いや、いや、濱風、むかひ風、涙なんぞは干《ひ》てしまふ。

えい、そんなら、いつも、いつまでも、思ひつづけて忘れまい。

おゝ、それでこそお前だ、それでこそお前だ。

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